49歳で電車の運転士になった男
中井貴一の「RAILWAYS」(2010年)を観る。平凡な展開だが、人生を深く考えさせられる良い映画だった。仕事に追われ家族を省みることのなかった50歳目前のエリート社員が、母の病気を契機に故郷に帰り、早期退職して子どもの頃からの夢だった電車の運転手になるというストーリー。奇抜な展開はなく、すべて自然に物語りは展開していく。森山未來のドラマ「モテキ」を同時に見ているが、こちらは30歳の未婚男性。複数の女性との間で恋に悩む。このような青年をモラトリアム人間というのであろうか。自己アイデンティティを確立するためのモラトリアムにとどまり、社会人としての義務と責任の支払いを猶予されている状態。30歳であれ、50歳であれ、70歳であれ、人はそれぞれの世代でテーマを背負って生きている。中井貴一の映画ではそれが理想的に美しく描かれていたが、現実的にはもっと見苦しいものかもしれない。高島礼子の妻のように理解あるのは稀で、東京でのエリート部長当時の暮らしを望んでいるかもしれない。志賀直哉の「暗夜行路」やモームの「人間の絆」なども青年期のモラトリアム人間を描いた作品であるし、中井の若い頃の作品「ふぞろいの林檎たち」もモラトリアム人間だった。生きがいを探すのは人である以上、死ぬまで続く。
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