風が吹いている
アリダ・ヴァリの「夏の嵐」。ベネチア貴婦人の官能的な作品。恋人がいう。「こういう所ではいつも音がする。シーツのすりきれる音、窓に虫のぶつかる音、抱き合っている時、こんな音がしていたと後になって気づく。・・・・細かいことが残る」と。人生、通り過ぎたとき、甦ってくるのは出来事ではなく、あの日あの時の風のそよぎであり、花の香りである。谷川の水のように清く、夕霧のようにほのかに、散る花のように侘びしさを湛えたクリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)の詩。
わたしが死んでしまっても
やさしい君よ
わたしのためにかなしい歌をうたわないでください
わたしのうえに ばらの花も
かげふかい いとすぎの木も 植えないでください
ただそこには つゆにぬれる
みどりのわか草をしいてください
そしてあなたが思いだすなら思いだして
わすれるならわすれてください
わたしはかげも見ないでしょう
雨も感じないでしょう
くるしげにないている
夜鶯の声もきかないでしょう
そして朝も夜もないうす明かりの中で
わたしは永久にうつらうつらと
思いだしたりわすれたり
しているでしょう
(三井ふたばこ訳)
「私のお墓の前に立って嘆き悲しまないでください。私はそこにはいません。眠ってなんかいません。私は千の風になって吹き抜けています」数年前に大ブームになった「千の風になって」のモチーフの原型のような気がします。ロセッティの有名な作品に「風」(西條八十作詞)もあります。
誰が風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木の葉を ふるわせて
風は通りぬけていく
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千の風もよいですが、
ざわわざわわざわわ…♪
さとうきび畑の声も忘れたくないですね。
投稿: さとる | 2008年10月 5日 (日) 02時33分