英雄を蝕んだフィラリア性象皮病
フィラリアは線形動物門に属する寄生虫で、今日の日本ではヒト寄生性のフィラリアがほぼ根絶されているため、イヌ寄生性のフィラリアの方が有名になっている。しかし、ヒト寄生性のフィラリアはアジア・アフリカの一部地域にみられ、江戸時代には日本各地に分布した恐ろしい感染症の1つであった。まれにイヌ寄生性のフィラリアも人体に感染することがあるが、これは心臓寄生性であり、象皮病は起こさない。また象皮病の直接的な原因はフィラリアの寄生ではなく、リンパ管の破壊と、それによる組織液の滞留である。そのため、体内のフィラリアがすでに死滅して感染自体は終結していても、この症状は進行する。
幕末維新の英雄、西郷隆盛が若い頃に象皮病に罹って、後遺症で陰嚢が大きく膨れ、馬にも乗れなかったという話はよく知られている。普段は兎の皮で作った袋に、陰嚢を入れていた。明治10年、西南戦争で敗れ鹿児島城山で自刃した西郷の死体には首がなかった。切腹後に誰かが埋葬のため首を持ち去ったものかも知れない。首のない屍体検視にあたり西郷本人と判定されたのは、この巨大な陰嚢があったからである。elphantiasis
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