失敗作ものがたり
綿矢りさの新刊「ひらいて」の刊行記念サイン会が東京紀伊国屋書店新宿本店で行われて長蛇の列だった。綿矢は昨年「かわいそうだね?」で大江健三郎賞を最年少で受賞している。本が売れないというが一部の有名作家はよく売れる。ノーベル賞が噂される村上春樹「1Q84」が3巻あわせて400万部以上売れている。だが「街と、その不確かな壁」は失敗作らしく、単行本も文庫本も再刊されない。村上春樹に限らず、すべての作家に失敗作がある。夏目漱石の「坑夫」、高浜虚子「俳諧師」、坂口安吾「吹雪物語」、横光利一「旅愁」、司馬遼太郎「妖怪」、家永三郎「真城子」、辻仁成「ニュートンの林檎」、綿矢りさ「夢を与える」。米国作家メルヴィルは「ピエール」の失敗でほとんど本が売れなくなった。スタインベックの「爛々と燃ゆる」は不評だった。アレクサンドル・デュマ・フィス(小デュマ)は「椿姫」1作が有名であるが、40年間にわたり執筆した作品はすべて失敗作といわれ、いまや顧みられることはない。デュマ・フェスの著作群を並べると、「淪落の女の群」「金銭問題」「私生児」「道楽親父」「女性の友」「オーブレイ夫人の思想」「クロードの妻」「バグダッドの王妃」「ドニーズ」「フランション」である。
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