ブラームスはお好き
青い鳥を探す童話劇、メーテルリンクの「青い鳥」(1908)はタイトル作法にも影響を与えたと思える。ジッドの「狭き門」(1909)、マンの「魔の山」(1924)、モームの「月と六ペンス」(1919)「剃刀の刃」(1944)、ヘミングウェイ、スタインベックなどの小説も判じ物めいた象徴的なタイトルが多い。映画、演劇などにも意味不明のタイトルが多い。「ガラスの動物園」「欲望という名の電車」「熱いトタン屋根の猫」「ティファニーで朝食を」「お茶と同情」「イヴの総て」。日本の近代文学では「破戒」「蒲団」「暗夜行路」「カインの末裔」などのタイトルは象徴的作法といえる。たとえば有島の「カインの末裔」(1917)は北海道で働く小作人の話であるが原罪というテーマ小説であるためこのようなタイトルを採っている。西洋風であるといえる。司馬遼太郎の「坂の上の雲」は日本海海戦を大勝利にみちびいた知将秋山真之の物語だが、やはりタイトルから内容を正しく想像することはできない。タイトルの話では、フランソワーズ・サガンの「ブラームスはお好き」がとくに話題になる。「ちょっとお茶でもいかがですか」という感じのシャレた女性への誘いの言葉なのだが、フランス人にはブラームスやワーグナーはあまり好きでない女性が多いと聞く。
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