中国の論語ブームと中華思想
中国には孔子、老子の時代より以前から現在に至るまで、およそ4千年の歴史を脈々として伝えてきた文化と思想がある。その儒教文化を中心とした中国の伝統的学問は、中国はもとより、朝鮮、日本にも古典として深く根づいている。だが中国の近代化への動きが始まる時、呉虞や陳独秀ら知識人は儒教を攻撃した。魯迅の文学作品にも孔子や儒教への批判が多く見られる。さらに記憶の新しいところでは、1964年から10年間におよぶ中国文化大革命のなかで、批林批孔運動が起こった。しかし、それは長い歴史からみれば、一時期の現象であった。近年、中国では論語ブームだという。テレビ番組でも「論語」「孟子」などの古典の講座の視聴率が高い。2006年のTV番組「百家講座」で北京師範大学の于丹(うたん、画像)の論語についての講座がブームに火をつけたといわれる。彼女の著書「論語心得」(中華書局)はベストセラーとなった。このブームの背景には、大国化した中国人が自国の伝統文化に自信を持ち始めたことの現れであるとみられる。習近平とプーチンが連携し、中国船の接続水域航行を常態化するのは、領海侵略への布石とみるのは明らかであろう。孔子の説く仁や義の教えとどのように関連するのか。たとえば「子曰、夷狄之有君、不如諸夏之亡也」(先生が言った。夷狄で君主のあるのは、中国で君主のないのにも及ばない」つまり夏(か)、中国は世界の中心であり、そのほかの国は野蛮であり、その野蛮を征服し中華化するのは、中国の使命とする中華思想にほかならない。
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