プライバシー
1961年のこの日、「宴のあと」でプライバシーを侵害されたとして元外交官・有田八郎(1884-1965)が三島由紀夫と新潮社を告訴した。日本初のプライバシー侵害訴訟であり、プライバシーという言葉が流行した。東宝SF特撮映画に「ガス人間第一号」というのがある。平凡な男(土屋嘉男)がパイロットになる夢をあきらめて図書館につとめている。ある日、奇妙な科学者に誘われてガス人間の実験台となった。そして図書館を利用している美しい日本舞踊の藤千代(八千草薫)に恋をする。ガス人間は銀行強盗で金を盗んで、家元復興の資金にする。このような突飛なストーリーだが、作品は悲しくも美しい。
土屋嘉男は海外に行ったときタクシーの運転手に「あなたの映画をみた」といわれた。土屋は黒澤監督の作品だろうと思ったら、なんと「ガス人間第一号」だった。この映画は海外で大ヒットしたらしい。八千草薫の「情鬼」という踊りがよかったのか、鉄格子をガス化して通り抜けるシーンがいいのか、ともかくクライマックスで劇場が紅蓮の炎になるシーンが日本美が生かされているのだろう。
ところで1960年といえば、ようやく図書館も個人貸出をするようになったころで、藤千代も大型の浮世絵など美術書を借りていた。三橋達也が館員の土屋嘉男に「先ほどの女性はどんな本をかりていたか」「先ほどの女性は誰か」と尋ねていた。館員の土屋はスラスラと答えていたが、まだ利用者のプライバシー保護はなかったのだろう。練馬区の図書館でテレビ番組「特別機動捜査隊」(波島進主演)でも同じようなシーンがあり、日本図書館協会ではテレビ局にシナリオを書き直すという「練馬テレビ事件」(昭和42年)があった。映画「ガス人間第一号」は海外でも大ヒットした作品で今でもDVDではカルト的人気の作品であるが、「図書館の自由」に関する問題を含む先駆的事例であった。作品では東京の図書館の館内が美しく撮れているし、「さよならコロンバス」的な図書館員の悲哀が土屋嘉男の雰囲気に出ていた。
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