これだけの本をいつ読めますか?
「あなたの愛読書は何ですか?」とか、「あなたの好きな映画は何ですか?」などという質問された場合、私はいつも困惑します。そしていつも作品が変わります。たいていは直近に読んだ本や観た映画です。そうして世界文学全集を眺めてみても、ほんとうに読んでよかったというものはなかなかありません。デュマの「椿姫」くらいでしょう。
「世界文学は大学院においてではなく、子供部屋においてはじまる」とスタンフォード大学教授アルベール・ゲラール(1914-2000)は言っています。「ガリヴァー旅行記」や「宝島」こそが世界文学の名にふさわしのかもしれません。むかし図書館の利用者で、読書好きのお婆さんがいて、きまって大きな活字の児童書の物語を借りてかえました。もちろんお孫さんのためではなくて、本人が読むのです。「大人の小説よりも児童書のほうが楽しいから」と照れていっていましたが、ほんとうに読書の愉しみを知っている人でした。世界文学のすぐれたものは一見近寄り難いものもありますが、普通の人間にも拒まれていないものがたくさんある。ポピュラーな面をそなえているから、何百年と読み継がれているのでしょう。(Albert Joseph Guerard)
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