グリルパルツァー
ジョン・アーヴィングの自伝的小説「ガープの世界」(1978)で主人公ガープはウィーンのハプスブルガー通りの古本屋で劇詩人フランツ・グリルパルツァー(1791-1872)の著作を見つける。ガープの処女作のタイトルは「ペンション・グリルパルツァー」という。
1月15日のこの日は、オーストリアで最も有名な劇作家グリルパルツァー(グリルパルツェルと表記されることもある)の誕生日。かつては、その誕生日は国民の祝祭日となっていた。でもその名前は日本ではほとんど知られていないだろう。ブリタニカ国際大百科事典には詳細な記述があるので、やはり世界的な作家であることは間違いない。翻訳大国日本でも見落とした作家がたくさんいるようだ。
いま彼の名前が日本で知られるのは次の一編の詩によるところが大きい。
接吻
手の上なら尊敬のキッス
ひたいの上なら友情のキッス
頬の上なら好意のキッス
くちびるならば愛情のキッス
閉じた瞼は憧れのキッス
手のひらならばお願いのキッス
腕首ならば欲望のキッス
さて、そのほかは、みんな狂気の沙汰である。
弁護士の子としてウィーンに生まれ.る。生涯独身でウィーンで過ごした。大学在学中に父を亡くし、家計を支えるため官庁に勤め、1856年に65歳で退職するまで役人のかたわら宮廷劇場の座付作家をしていた。主な作品「祖先の女」(1817)「サッフォー」(1818)「接吻」(1819)「金羊皮」(1822)「オトカル王の幸福と最後」(1823)「主人の忠実な従者」(1828)「海の波、恋の波」(1831)「黒海の悲歌」(1835)「夢が人生」(1834)「偽る者に災いあれ」(1838)「哀れな音楽師」(1848)「ゼンドミール僧院」(1828)。
晩年になってからグリルパルツァーの作品は認められ、次々と名誉を与えられたが、それはあまりにも遅すぎた。1872年1月21日ウィーンで死んだときは広く哀悼された。遺稿から「トレードのユダヤ女」「ハプスブルク家の兄弟の争い」「リブッサ」が発見された。
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