クリスティーナ・ロセッティ
風
誰が風を見たでしょう?
ぼくもあなたも見やしない、
けれど木の葉をふるわせて
風はとおりぬけてゆく。
誰が風を見たでしょう?
あなたもぼくも見やしない、
けれど樹立(こだち)が頭をさげて
風は通りすぎてゆく。
*
希望と喜び
希望が茂みに咲くならば
木に喜びが咲くならば
どんなに素敵な花束が
摘んで編まれることでしょう
けれども風が吹く秋に
かよわい花が凋むとき
褪せ行く希望と喜びを
ああ どうしたらいいでしょう
クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)はロンドンに生まれる。ビクトリア朝の女流詩人。画家ダンテ・ガブリエル・ロセッティの妹。「風」は西条八十が訳し、大正10年に草川信が曲をつけ童謡「風」ができた。いまでも「風をみたひと」という題で合唱曲として歌われている。「希望と喜び」は羽矢謙一訳。
なお岩波文庫「クリスチナ・ロセッティ詩抄」入江直祐訳では文語調の「風」が収録されている。
誰が一体 風を見た。
私もあなたも見たことがないが
枝の垂葉(たれは)がゆれるとき
風が通ってゐるのです。
誰が一体 風を見た。
あなたも私も見たことがないが
梢がお辞儀をするときは
風が渡ってゐるのです。
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そうですね、詩は訳し方でかなり印象変ります。
上田敏の訳詩など絶妙の日本語ですが、原詩と比較してみると直訳とは似ても似つかぬもので、感嘆します。ドナルド・キーンの英語版「日本文学史」には、その辺が面白く解説されてますね。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年1月18日 (金) 14時54分