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2012年12月23日 (日)

クリスティーナ・ロセッティ

         風

 誰が風を見たでしょう?

 ぼくもあなたも見やしない、

 けれど木の葉をふるわせて

 風はとおりぬけてゆく。

 誰が風を見たでしょう?

 あなたもぼくも見やしない、

 けれど樹立(こだち)が頭をさげて

 風は通りすぎてゆく。

        *

     希望と喜び

 希望が茂みに咲くならば

 木に喜びが咲くならば

 どんなに素敵な花束が

 摘んで編まれることでしょう

 けれども風が吹く秋に

 かよわい花が凋むとき

 褪せ行く希望と喜びを

 ああ どうしたらいいでしょう

   クリスティーナ・ロセッティ(1830-1894)はロンドンに生まれる。ビクトリア朝の女流詩人。画家ダンテ・ガブリエル・ロセッティの妹。「風」は西条八十が訳し、大正10年に草川信が曲をつけ童謡「風」ができた。いまでも「風をみたひと」という題で合唱曲として歌われている。「希望と喜び」は羽矢謙一訳。

なお岩波文庫「クリスチナ・ロセッティ詩抄」入江直祐訳では文語調の「風」が収録されている。

 誰が一体 風を見た。

 私もあなたも見たことがないが

 枝の垂葉(たれは)がゆれるとき

 風が通ってゐるのです。

 誰が一体 風を見た。

 あなたも私も見たことがないが

 梢がお辞儀をするときは

 風が渡ってゐるのです。

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コメント

そうですね、詩は訳し方でかなり印象変ります。

上田敏の訳詩など絶妙の日本語ですが、原詩と比較してみると直訳とは似ても似つかぬもので、感嘆します。ドナルド・キーンの英語版「日本文学史」には、その辺が面白く解説されてますね。

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