ハンサム考
2013年カレンダーが発売されている。今、活躍の俳優、アイドルたちにとって販売数は人気のバロメーターである。最近のドラマをみると顔ぶれが変わったように思う。大河ドラマ「平清盛」も松山ケンイチが若いので脇役陣も若手起用となっている。朝ドラ「梅ちゃん先生」もほとんど無名の近い男優陣だった。松坂桃季、高橋光臣、満島真之介らは一躍スター級になった。「大奥」も将軍を女性にして、陪臣にイケメン俳優を多数出演させる手法がとられている。やはり視聴率をとるには女性にターゲットをあてることなのだろう。ここ数年、「イケメン」という語が、美男でも二枚目でもハンサムでもなく、頻繁に耳にするようになった。だがイケメンはちょっと品がないのでハンサムもまだ死語にはなっていない。「ハンサムスーツ」(2008)という映画はヒットした。もともと英語handsomeからの和製語。hand(手)とsome(~しやすい)からなる言葉で、「手で扱いやすい」、つまり顔立ちがよいと美女を扱いやすいということから、ハンサムと呼ばれるようになった。日本でいつ頃から使われ出したのかはっきりしない。デカダンの織田作之助や坂口安吾の小説にはしばしば使われている。田中英光「オリンポスの果実」(1940)にもハンサムという語がみえる。おそらく昭和初期のモガ・モボの時代にまでさかのぼるかもしれない。しかしハンサムが一般化するのは戦後からだろうか。池部良、鶴田浩二、根上淳らスーツの似合う若手スターが典型であった。昭和30年代になると、新東宝が日活ダイヤモンドラインに対抗して、長身の若手俳優、菅原文太、吉田輝雄、寺島達夫、高宮敬二の4人をハンサム・タワーズと称して売り出した。かつてハンサムと呼ばれた男性たちもすっかり白髪の老人である。
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