本の運命
本には人と同じように運命がある。ベストセラーとして多くの読者に読まれる本。一度も読まれずに返本されて断裁される本。100年、200年と読み継がれる本。いちばん価値があると考えられる本はどこに置くだろうか。水害にあわないために書架の一番高いところに置くことが一般的だろう。こんな話がある。書物愛好家で知られたシピオ・マツフェが価値あるラテン語の写本を探していた。イタリアのヴェローナにあることはわかっていたが、2人の有名な学者、マビロンとモントフォーコンもそれを見つけることはできなかった。マツフェはヴェローナの修道院の図書館で、その本を発見した。書物はこの図書館の本棚の中にはなかった。そしてマンフェ以前には、誰一人として、梯子をよじ登って、本棚の頂辺を見ることに考え及ばなかったのである。そこにこれらの貴重な写本が全部、長い年月の間、塵に埋れてゴチャゴチャになって横たわっていたのである。マツフェは喜びのあまり、殆ど気が遠くなろうとした。そこに一番古いラテン語の写本が残存していたのだ!「あらゆる本はそれぞれの運命を持っている」というラテン語の格言がある。どんな本にも人とおなじようにさまざまな運命があるのだ。
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