大阪府立中之島図書館のゆくえ
台風4号が通過するなか、近畿に衝撃のニュースが走った。橋下と松井が会合で「あんなところに図書館いらん!」と発言し、大阪府立中之島図書館を廃止する方針を固めたという。大阪にはすでに東大阪市荒本に府立図書館があり、市内には西区に中央図書館、23の分館があり図書館網は整備されている。だが中之島図書館は100年以上の歴史を有し、関西に住む者なら貴重書を求めて何度も利用した経験のある人は多い。いわば関西の文化の殿堂である。大規模な図書館の存廃は経済的な事情で決めるべきではない。大阪では数年前に国際児童文学館が廃止しており、これらは悪魔のシナリオに添った思考である。つまり「図書館いらない」といえば文化好きのインテリは反対するが、むしろ図書館など1度も利用していない層からは支持を得られる、つまり図書館廃止が大量票獲得につながると判断したのであろうか。具体的な活用法を示すことなく、いきなり廃止と宣言するのも橋下流である。すでに「地方公務員が政治活動したら処分」と脅かされているので、司書たちの抵抗や反対運動はあまり起こらないだろう。こうした危機のとき図書館人が勇気をもって発言したり行動したりすることはすくない。弱体化した日本図書館協会も政治的なことは発言せず、世の趨勢に迎合した保守的な団体である。逆に向かった文化行政のベクトルを変えることは容易ではない。大学図書館や文化人は自分たちには関係なく対岸の火事とみるだろうが、大図書館の廃止は文化・文明の抹殺である。今後の中之島図書館の存廃問題を注視していく。
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