王心斎「鰍鱔説」
陽明学の王心斎(1483-1540)にこんな話がある。巨大な甕の中に、大きなウナギがたくさんうずくまっていたが、身動きができず、まさに死なんばかりであった。その中に、一匹、小さなドジョウが混ざり込んでいて、大きなウナギの間を縦横に行き交いして泳ぎまわり、とうとう甕の外に出ることができた。すると、そのドジョウが甕の外に出ることができたお蔭で、隙間ができて、大きなウナギたちも動くことができるようになって、ドジョウが甕の外に出た後、ウナギたちもすべて甕の外に出ることができるようになった。「かの気息奄々たりしものみな蘇り、相ともに大海に帰りぬ」とある。
どんなに膠着し、閉塞した社会状況にあっても、だれかひとり、他愛のないものが、その状況から脱出することができると、中にいる全員が、苦境から脱出することが可能になる、という寓話である。(伝習録)
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