棺桶に片足を突つ込む
棺桶には大きく分けて寝棺(伸展葬)と座棺(屈葬)がある。江戸時代、ほとんどが座棺であった。多くは木製の桶型だった。明治になると富裕層が木製の寝棺を使用するようになった。戦後になり、火葬が一般化し、火葬炉が近代化するのに歩調を合わせて、寝棺が主流となり現在では座棺は姿を消した。
ところで年をとって老い先の短いことを喩えて「棺桶に片足を突っ込む」という。これは江戸期からあった日本語だろうか。青空文庫などで検索すると、小説での使用例がわかるが、古いもので夢野久作の「暗黒公使」(1933)であった。明治期にはあまり見られない。欧米文化が翻訳として紹介されるようになって、昭和に入って一般に使われるようになったのではないだろうか。屈葬の座棺だと片足を突っ込むという表現は生れないだろう。英語では次のように使う。
Althought he has one foot in the grave,he still insists on running again for the Diet in the coming election.(片足を棺桶に突っ込んでいるのに、次の総選挙にまた出馬すると言っている)
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