沈黙する目撃者たち
夜中に、近所で悲鳴が聞こえたら、あなたならどうするだろうか?すぐに警察に通報するか、それとも蒲団をかぶって、知らぬふりして寝てしまうだろうか。
1964年、ニューヨークで深夜、キティ・ジェノヴィーズという若い女性が暴漢に襲われた。35分間も暴行は続き、その地域の住民が38人いたが、誰も通報せず、そのうち彼女は殺されてしまった。目撃者が大勢いたのに何故通報しなかったのか。早く通報していたら彼女は助かっていたかもしれない。他人の人が見ているから、私が連絡しなくてもいい、と自分の責任が分散される。日本でも衆人環視の殺人事件はこれまで何度かある。浅沼稲次郎刺殺事件(1960年)、豊田商事の永野一雄刺殺事件(1985年)、村井秀夫刺殺事件(1995)。いずれも大勢の報道陣が見守る中で起こった事件である。秋葉原通り魔事件(2008年)では、事故現場を写真撮影する傍観者に批難の声が上がった。これより前に紫雲丸事故(1955年)で報道カメラマンが助けを求める乗客を撮影した写真が新聞に掲載され問題となった。人命救助か、報道を優先するのか。今回の東日本大震災でも報道関係者は人命よりも報道優先だった。中国に「三人寄れば、無責任」という諺がある。
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