大佛次郎記念館
「おさらぎじろう」と正しく読める人も少なくなっただろう。「だいぶつじろう」と読めば笑われるかもしれないが、家が鎌倉の大仏の裏にあったのでペンネームにしたそうである。横浜の港の見える丘公園には大佛次郎記念館がある。自筆原稿や遺品が多数・展示されている。「鞍馬天狗」「赤穂浪士」など時代小説家のイメージが強いが、「パリ燃ゆ」「天皇の世紀」などのノンフィクションでも知られる。東大、外務省という体制の中にいる面と、反権力、反骨精神と両面性のある人であった。日記などを読むと、毎日ビフテキや高級料亭へ行くかと思うと、数十万円の洋書を買う。ラジオで王貞治のホームランに喜ぶ意外な一面がある。司馬遼太郎の作品はすべて読んでいたが、感想がない。若手の台頭にライバル視しているようにも思える。インテリでありながら、「軽薄でオッチョコチョイで気まぐれ」とは自身でも知っているようである。昭和30年代、自動車の交通量が増加すると、いちはやく人間優先を新聞に提唱し、のちのナショナル・トラスト運動へと発展していく。大佛次郎は決して忘れられない作家だ。
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