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2012年2月20日 (月)

日本語語感の辞典

   「フランス」という通常の片仮名表記では特別の語感は生じないが、「仏蘭西」と書くと高級感が増す感じになる。「仏蘭西料理」という店の看板を見ると、値段が心配になって店の前で財布の中身を調べる。「ふらんす語」という看板を見ると、宿題を出さずに手を取って教えてくれそうな優しい雰囲気を感じ、スタンダールが読める段階まで進まないような気がする。これまで「意味」を調べる国語辞典は数多く出ているが、「語感」を探る手がかりとなる専門辞典は存在しなかった。2010年に岩波書店から刊行されたのが本書である。1170ページもの分量ながら中村明の個人執筆であることに敬服する。項目の説明は感というか思いつきのような記述もみられるが、楽しく読む辞典である。3000円とは岩波としては格安の値段である。

「小股の切れ上がった」すらりと脚の長い意の古めかしい和風の表現。「小股の切れ上がったいい女」の意味としては、特に下半身のすらりとした体型をさしているだけであるが、この古風な表現は伝統的に着物姿の小粋な婦人の形容に用いてきたため、「小股の切れ上がった長身の美男力士」などと男性の形容に用いるわけにいかない雰囲気がある。また、レビューガールや女子バレー選手について用いると、和服姿でないという点でやはり違和感が残る。ことばの意味というよりも、何に対して用いてきたかという表現対象の在り方に関する履歴上の違和感に近い。ことばの伝統的な使用がいわば照り返しとなって規制が働く一例である。(引用「語感の辞典」380p)

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