島崎藤村と有島武郎
近代日本文学の場合、作家を自然主義とか白樺派とか文学運動で識別して理解する傾向が強い。たとえば自然主義の島崎藤村と白樺派の有島武郎との間の隔たりは大きかったのであろうか。藤村と有島の弟生馬とは親友であった。藤村と有島武郎とが交遊関係にあったという事実はないが、麹町界隈に居住していたので面識はあったであろう。文学上の影響でいえば、キリスト教というベースがあり、藤村の「ある女の生涯」は有島の「或る女」にインスパイアーされているのではないだろうか。早月葉子は「新しい女」を自認し、奔放な生き方であるが、「ある女の生涯」の主人公おげんは「古い女」であり対照的ではあるが、孤独な死を迎えていくというプロセスでは共通している。自然主義と白樺派との距離はなく、2人は理解しあえる部分があったような気がする。
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