鳥海青児と美川きよ
鳥海、小野忠弘、美川きよ
画家の鳥海青児(1902-1972)が小説家・美川きよと結婚したのは昭和14年1月15日である。美川きよは小島政二郎(1894-1994)の愛人としてよく知られていた。直木賞候補にもなり、戦前は多数の作品を残している。鳥海37歳、美川38歳。美川には小島との間に一人の男子がいる。昭和53年に刊行された美川きよ「夜のノートルダム」は暴露本であるかもしれない。しかし流石に流行作家であっただけに、鳥海との出会い、A(小島)との別れ、鳥海の求愛などステキな男女物語が小説風に描かれている。鳥海を夢中にさせた美川きよは魅力的な人だったのだろう。そして題名の「夜のノートルダム」がよい。昭和8年の作品であるが、渋い色調でぶ厚く塗られた重厚な質感は鳥海の特徴がよく現れている。美川が鳥海のアトリエで買った作品であるという。「夜のノートルダム」を読むと鳥海青児が画家として大きな仕事をしたのは夫人の支えがあったことが伺われる。
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