コルネリア夫人の宝石
グラックス兄弟の母コルネリアは賢夫人として世界史に名を残している。ローマの貴族たちが、奢侈にふけって遊んでいるのには目もくれず、二人の息子たち、兄のティベリウス、弟のガイウスの教育に全力をそそいだ。その評判が高いのを嫉んだ貴婦人がやって来て、めいめい美しい身の回りの宝石を見せびらかして、夫人にも見せてくださいとせがんだ。夫人はにこやかに応えて言った。
「まことにお恥ずかしゅうございますが、わたしにはそのような貴いものをもちあわせておりませんが、見ていただきたいと思う宝石を連れてまいりましょう」といって、ティベリウス・ガイウスの兄弟を呼んだ。
呼ばれて部屋に現れた二人の少年の立派な態度と風采をみて、貴婦人たちは、いまさらのように自分たちの心がけの浅はかなことに気がつき、赤面して帰ったということである。
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