地獄の逃避行
テレンス・マリック監督の「バッドライン」(1973年米映画)は当時主演のマーティン・シーンが無名なので日本未公開だったが、「地獄の黙示録」(1979)でスターとなり、この作品が「地獄の逃避行」という邦題でDVD販売されている。
舞台はサウス・ダコタ。ある日、青年キット(マーティン・シーン)は仕事の帰りにホリー(シシー・スペイセク)に出会い、恋に落ちる。だがホリーの父親に交際を反対され、キッドが脅しのつもりで向けた銃が、誤って射殺してしまう。現代版ボニーとクライドのようなキッドとホリーの逃避行が始まる。映画は自然の風景をまじえて美しい映像であるが、この話は1958年にネブラスカ州リンカーンの町で実際に起きたチャーリー・スタークウェザー無差別殺人事件が基になっている。
チャーリー・スタークウェザー18歳(1938年生)とキャリル・フューゲイト13歳が知り合ったのは、1956年の夏の初めだった。ふたりはデートをかさね愛し合うようになった。彼女に贈り物を買う金を得るために、彼が思いついたことはガソリンスタンドを襲うことだった。1957年12月1日、クレスト・ガソリンスタンドの店員を殺し100ドルちょっとを盗んだ。そして1958年1月21日、ベルモントでキャリルの父母妹の3人を殺害した。そして1月27日、マイヤー農場で1人、1月27日学校の地下室で2人、1月28日リンカーンの大富豪C・ラウアー・ウォード邸で3人を殺した。1月29日ワイオミングで靴のセールスマンが11人目の被害者となった。男6人と女5人。スタークウェザーはワイオミング州ダグラスの拘置所に連行された。1959年6月25日、彼は電気椅子で処刑された。終身刑を宣告されたキャリルは、ネブラスカ州ヨークの女子感化院に送られ、1976年仮釈放されている。
1950年代のアメリカでは、豊かになったティーンエージャーが一つの社会階層として注目され始め、ブルージーンズに白いTシャツ、オールバックの髪という独特のスタイルの反抗的な若者も登場した。映画「乱暴者」のマーロン・ブランドや「理由なき反抗」のジェームズ・ディーンは彼らのヒーロー的存在であった。ジャック・ケルアックの小説「路上」は、若者の間でもてはやされた。
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