どこまで続く「きづな」ブーム
「新党きづな」が誕生した。歌謡曲の文句「♪たとえ時がうつろうと縫いあわせた絆は決してほどけない」(平井堅)「♪愛という名の絆の糸は切れてしまえば結べない」(水森かおり)紅白歌合戦の歌詞や司会者のトークの中でも「絆」という言葉は10回以上は出てきた。正月番組「向田邦子が教えてくれること 山口智子と考える絆」
「なでしこ」と「絆」が2011年のキーワードであったが、それは100年前の「日露戦争」と「大和魂」の関係によく似ている。ロシアに勝って(引分けだろう)一等国になってスローガンが「大和魂」。アメリカに勝って(引分けだろう)夢、希望、感動を与えてくれた、人と人とのつながりの大切を感じた1年だった、そしてすべて「きづな」に集約される。批判より肯定。日本人の一体感をもたせる言葉として「大和魂」はさすがに使えないので、かわりに耳ざわりのよい「絆」を使うようになった。本来、「きづな」は個人の心の奥で密に感じるもの。それが声高に国中が連呼して連帯感をもとうとする。「坂の上の雲」で漱石が大和魂を批判したら、子規の妹が立腹して、「もっと素直になりなさい。がんばれといえばよいのよ」と漱石を嗜める場面がある。これはもちろん司馬の原作にはない。NHKの制作者が意図的に創作したのである。きづなブームは国家主義プロパガンダそのものである。芸能人のメッセージというのは理性的なものではなく、常に時代に迎合的なものだ。被災地慰問は戦前の戦地慰問。年が明けたら芸能人や富裕層はみんな休暇をとって海外の保養地で楽しんでいるだろう。それと不思議に感じたのは、「なでしこがアメリカに勝った」という審査委員の発言。厳密には延長PK戦は公式記録では引き分け扱いで、日本とアメリカの対戦成績は25戦0勝4分21敗。まだ一度も勝ったことはない。古人曰く、勝って兜の緒を締めよ、と。大和魂も絆も声高に言うのは胡散臭い。
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