ジェンキンスの耳戦争
戦争は、普仏戦争のように当事国の名前をつけたり、太平洋戦争のように主な舞台となった地名をつけたりするのが普通である。ところが、1739年にイギリスとスペインとの間で起こった戦争には、「ジェンキンスの耳戦争」(1739-1748)という、なんとも奇妙な名前がつけられている。
1731年、ロバート・ジェンキンス(1700-?)というイギリスの船長が、西インドからの帰途、スペイン警備艦に捕らえられ、片方の耳を切り取られた。そのころイギリスとスペインは西インド諸島における奴隷貿易の利権をめぐって、抗争が激化していった。だが開戦するには、何か口実がいる。そこで、イギリスの下院で取り上げられたのが、8年前のジェンキンスの耳切り事件だったというわけである。1739年10月、イギリスはパナマ地峡にあるスペイン貿易の重要拠点、ポルトベロを占領した。この戦争は、やがて翌年のオーストリア継承戦争に合流する。ジェンキンスの耳1つがパリ条約(1763年)後のイギリスの覇権の確立に大いに役立ったのである。ところで「ジェンキンスの耳戦争」と戦争名に冠せられたジェンキンス氏だが、ご当人がいつ没したのか歴史の記録にまったくなく、いまのところ不明である。
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