シスレー「牧草地」
アルフレッド・シスレーは他の印象派の画家たちのような強烈な個性はないが、温和で穏やかな田園風景には日本人好みの詩情が感じられる。「牧草地」はワシントン・ナショナル・ギャラリーの創設者アンドリュー・メロンの長女エルサ・メロン・ブルース(1901-1969)のコレクションの一点。ルーヴエシエンヌ近くの田園風景を描いたものだろう。前景の野原には野生の草が生い茂り、可憐な花が咲いている。麦わら帽子をかぶったふたりの人物は草むらに隠れてよく見えない。柵と樹木でさえぎられた先にある小高い丘には田んぼがあり、そこにも働く農民たちが小さく描かれている。同じ田園を描いてもモネとルノワールの作品には都会的な感じを与えるが、シスレーの作品の人物たちは農村的で田園の趣がより濃厚である。また空を占める部分が半分以上あり、のどかな情趣をかもしだしている。
« 漱石・陶潜・王維の東洋的境地 | トップページ | 大阪、ロンドンは衰退しているのか »
「今日の名画」カテゴリの記事
- ローマの美術館(2017.08.04)
- この名画はジャンヌ・ダルクではない(2024.04.26)
- 漱石と西洋美術(2020.05.14)
- モナリザの眉毛(2014.06.25)
- フェルナン・レジェ(2014.04.22)
コメント