「いとほし」と「いとをかし」の異同
枕草子の能因本と三巻本との異同を調べていると、「いとほし」と「いとをかし」の混同があることに気づかされる。例えば、第21段「すさまじきもの」は金子元信の「枕草子通解」(能因本系)では、
ゆるぎありきたるも、いみじういとほしう、すさまじげなり
「うそうそと家の中を歩き回っているのも気の毒だし、また何とも気ぬけのしたような光景だ」という大意である。
同じ箇所が三巻本では、もともとこのようになっていた。
「ゆるきありきたるも、いみしういとをかしすさましけなり」とある。
ここでは、「いとをかし」ではなく「いとほしう」(気の毒で、という意)であるので、能因本系が正しいことになる。三巻本は「いとほしうすさまじげなり」と訂正されている。
参考:大川五兵衛「枕草子の伝本による「いとほし」と「いとをかし」の異同」 聖徳大学紀要12 1979年
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