ソロンと王様
ギリシアで財政破綻による政府の緊縮政策に反対した13万人市民のデモが起きている。だがストに参加している人の自宅をみると、大理石の豪邸に住み、小型船でエーゲ海の島でバカンスを楽しんでいる人たちである。ギリシア人には伝統的に楽天的で浪費家な気性があるようにみえる。世界史で最初に登場する人物はソロン(前640頃~前560頃)という調停者で、貨幣経済の進展で貧富の格差が激しくなって財産政治(ティモクラシー)を説いたという。ソロンにこんな挿話が伝わっている。
ソロンが、クロイスという裕福な王様に会ったときのこと。クロイスは自分の持っている宝をソロンに見せたあとでいった。「世界でいちばん幸福な人は誰だと思う」王はソロンが自分をいちばん幸福な人だといってくれると思っていた。ところがソロンは、若くして美しく死んだ人の名前ばかりをあげて王様の名前はついにあげなかった。王様はとうとう黙っていられないので、その理由を聞いた。ソロンは、「神は幸せ者に嫉妬するということを王様はご存知か。浮き沈みは世の習い。幸福がいつまでも続くとは限りません。人間は死ぬまで、その人の幸福はわからないものです。死んで始めてその人が幸福だったかどうかわかります」王様はこの答えの意味が理解できなかったが、ソロンのいうことに反対できないので、内心不服だが黙っていた。
その後この王様は、隣国の王様と戦争し負けて、いよいよ殺されることになった。その時、王様はソロンのことを思い出して、「ソロン、ソロン」とつい口に出して言ってしまった。それを聞いた敵の王様は、「なぜ、ソロン、ソロンというのか」と訊ねた。王様はそこで、かつてソロンにいわれたことを話した。その結果、王様は殺されずにすむことになった。
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