スポーツマン金之助
夏目漱石は「吾輩は猫である」の苦沙弥先生のような病弱な書斎人で、スポーツとは無縁のようなイメージがあるが、実際の夏目金之助は学生時代、壮健で運動神経もよく、なかなかのスポーツマンだったと思われる。「大学時代器械体操の名手だった。抜群にうまかった」という同級生の証言も残っている。正岡子規の野球に対抗してか、子規への手紙では「当時は弓の稽古に朝夕余念なく候」と書いている。漱石は帝大在学中に弓道の修行に専念し、それは明治29年熊本の第五高等学校に移るまで続いた。弓のことは漱石の俳句が多数残されていることからも推察できるが、寺田寅彦の証言によると、去来の「秋風や白木の弓につる張らん」の句が漱石の言葉から出たことも知られている。(「夏目漱石先生の追憶」)後年になって禅に親しむ漱石であるが、若き日の弓道の体験とどこか通じるところがあるように感じている。
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