謎の小泉鉄
小泉鉄(1886-1954)ほど評価されない文学者もめずらしい。「こいずみまがね」と読む。広辞苑には採録されていない。だが国立国会図書館で検索すると21件もヒットする。
福島県出身。東京帝国大学哲学科中退。武者小路実篤に共鳴し、明治44年より「白樺」同人となる。自らも小説「三つの勝利」を書くも、ゴーギャンの「ノア・ノア」やストリンドベリイなどの翻訳を手がける。だが彼の特異なところは、関東大震災以後、大原社会問題研究所の嘱託を務め、大正14年から昭和3年の4年間、台湾に渡り原住民の人類学的調査を行っている。「蕃郷風物記」や「台湾土俗史」の著書がある。社会学、人類学、法律学などに深く、小説、評論などその教養の広さに驚かされる。
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