お富与三郎
「♪粋な黒塀 見越しの松に 仇な姿の洗い髪~」春日八郎の「お富さん」(昭和29年)は歌舞伎「与話情浮名横櫛」の一場面「源氏店」から題材を得ている。当時、明るく小気味よいテンポで宴会ソングの定番となり大ヒット。子供達も意味もわからずに盛んに歌っていた。梗概を記す。
伊豆屋与三郎は木更津へ出養生に行ったとき、土地の貸元赤間源左衛門の妾お富と互いに見染めて密会するまでになるが、露見して源左衛門のためなぶり切りにされ、全身に34か所の刀傷を受ける。お富は投身するが、和泉屋の番頭多左衛門に助けられて囲い者となる。それから3年、ならず者の群に落ちた与三郎は、ある日、相棒の蝙蝠安と強請りに行った源氏店の妾宅に、死んだと思ったお富を見いだす。安楽そうなお富を見て、与三郎は胸のほむらを燃やすが、やがて主人多左衛門ことお富の兄とわかり、その情けで2人の仲は元に戻る。その後、与三郎は和泉屋で強請りを働き、そこで実母に会うが、まもなく捕らえられて島流しになる。やがて、島を抜け出した与三郎は伊豆屋の養父にそれとなく対面して別れを惜しみ、大崎の顔役観音久次のところで今はその女房となっていたお富と三度めぐり会う。家来筋にあたる久次の切腹で、その血を服した与三郎は疵がなおる。
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