昆虫学者カットビンケン
いまでは「人類揺籃の地」として知られている東アフリカのオルドヴァイ(Olduvai)峡谷を最初に発見したのは、ドイツの昆虫学者カットビンケンである。1911年、蝶の採集のためにオルドヴァイを訪れ、案内のマサイにこの地名をたずねた。マサイは質問の意味がよく分からないまま、一帯に繁茂している植物名を聞かれたのだろうと思って「オルドパイ(Oldupai)」と答えた。東アフリカ野性Sisal(リュウゼツランの一種をマサイ語でこう呼ぶ。これをカットビンケンはオルドヴァイと聞き間違えたのである。ルイス・リーキー(1903-1972)がアフリカを人類の誕生の地と考えてオルドヴァイを探検したのはそれから20年後のことである。
「サルからヒトへ」という見出し語をみかける。これはきわめて比喩的な表現で、ニホンザルのようなサルがヒトへと進化したとは、誰も考えないだろう。しかしダーウィンの進化論以降、ウェルズの啓蒙的な著作「世界史体系」(1920)などが広く読まれ、人間は単純なアミーバから複雑なヒトへと進化したと漠然と思うようになった。だがキリスト教信仰の強いアメリカでは、「進化論」と聖書の説く「創造説」とには大きな隔たりがある。ビクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」(1940)という娯楽映画もある歴史的意味をもつ作品かも知れない。
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