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2011年6月18日 (土)

バッドエンディング

   駅を降りて、商店街があって、パチンコ屋から流れる流行歌を聞きながら、路地から路地へと抜けると、小さな本屋がある。僕はここの経営者だ。いや経営という大げさなものじゃない。本は売らないし、貸さない。店内で読むだけの地域文庫のようなものである。古い本ばかりなので、めったに客はこない。1人でぽつんと考えでいるとこが多い。死んだ父のことや母のことを思い出す。そしていつかは自分もこの世から消えてしまうといことを何度も考えている。

   うだるような暑い日だった。伯父さんが急に容態が悪くなって、病院に連れて行った。年中無休の店だが、少しの間は店を閉めたままにした。昼過ぎに店に戻ると、店の前に若い女性が立っていた。「おじさん、ずいぶん待ったわ。こんな時間まで閉めるなら、一言書いといてくれたらいいじゃない!」近所の米屋の娘のナツコだった。「ゴメン、ゴメン。今すぐ開けるから」僕は電気を点けて、シャツターをあげた。そして駄菓子屋で買ってきたアイスキャンデーを娘に差し出した。ナツコは黙って受け取り、ソファーにもたれてカリカリとかじった。「おじさん、GEの新しいのない?」ナツコは流石景の「GE グッドエンディング」の愛読者だった。「ああ、8巻が入ったよ」というと、ナツコは取り出して、黙って30分ほど読んで帰って行った。

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コメント

「巨人の星」漫画読んだ記憶ありますが、テレビの方が鮮明ですね。

新聞記者時代、役所の前に漫画喫茶あったのでよく行きました。

役所の若い連中、スパゲティー食べながら漫画読んでましたが、私が新聞記者なの皆知ってますから、私の傍には誰も近ついてはきませんでした。

一首献上。

 役所前漫画喫茶に待ち合はせし彼女の数人居た りしあの頃

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