新井奥邃と田中正造
新井奥邃(あらいおうすい 1844-1922)は明治の伝道師トマス・レイク・ハリスからキリスト教について学び、生涯を貧窮のなかで過ごした。明治36年、巣鴨に私塾「謙和舎」を開き、伝道生活に入る。名誉欲など微塵もない人で、一枚の写真も残さず、隠棲し、大正11年、没している。享年77歳。彼の塾に出入りした者には内村鑑三や田中正造がいる。とくに田中は大正14年7月に入獄中にはじめて聖書を読んで以来、キリスト教へ接近し、新井奥邃の影響を強く受けた。足尾銅山鉱毒問題で田中が谷中村に入って、農民たちと生活を共にし、半生をかけて闘ったという行動には、少なからずキリスト教信仰がみとめられる。死ぬとき田中の枕元にあった遺品の中には、新約聖書があった。
関係文献
田中正造の聖書観 竹中正夫 キリスト教社会問題研究 1989
田中正造と新約聖書、そしてキリスト教? 大竹庸悦 流通経済大学論集28(2) 1993
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