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2011年4月 3日 (日)

海におちたピアノ

   海の底では魚たちがゆっくり泳ぎまわっていました。そこへいきなり大きな音がしたかと思うと、まっ黒なピアノが海に落ちてきました。魚たちは珍しがって、集まってきました。そして口ぐちに「なんだろう?」と言いました。お母さんのウナギは、「これは鏡台ですよ」と言いました。そこへ一匹のアジがきて「これはなにか食べ物ですよ」と知ったかぶりをしました。波がピアノをゆさぶと、

♪ボロン、ボロロン

と音楽がひびきます。朝がくるとトビウオが群れて、こわれかけたピアノの箱で遊びます。

♪ボロン、ボロロン

ピアノの音を、陸の桟橋のところまで聞きました。

「ねえ、あれはなんだろう」

「あれは、きっと、人魚が歌っているのよ」

♪ボロン、ボロロン

でもたった一人だけ、悲しそうに海の底を見つめている人がいました。それは、海に落ちたピアノの持ち主だった女の人です。やがて夏がすぎて、秋が来ました。そしてピアノは海の底へ流されていきました。それっきり、桟橋のあたりでは音楽は聞こえなくなりました。(ストリンドベリ童話集)

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