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2011年3月 5日 (土)

イエスを信ずる者の契約

    数日前、ブログ記事「内村鑑三不敬事件」について概略を述べた。札幌農学校出身者でクラークの門下生には、有名な「イエスを信ずる者の契約」という誓約書について語らなければならないだろう。この契約の後半部分にはいわゆる十戒が記されていて、これが、のち内村にとって倫理的制約となって不敬事件の一因ともなる。札幌農学校のクラークは、明治10年3月5日、「イエスを信ずる者の契約」を作成し、それにクラーク以下、学生たちが署名した。ここにその訳文を掲載する。(有島武郎訳)

茲に署名する札幌農学校の学生は基督の命に従ふて基督を信ずる事を告白し且つ基督信徒の義務を忠実に尽して祝す可き救主即ち十字架の死を以て我儕の罪を贖ひ給ひし者に我儕の愛と感謝の情を表し且つ基督の王国拡がり栄光顕はれ其贖ひ給へる人々の救はれん事を切望す故に我儕は今より後基督の忠実なる弟子となりて其教を欠なく守らんことを厳かに神に誓ひ且つ互に誓ふ我儕は適当なる機会来る時は試験を受けて受洗し福音主義の教会に加はらん事を約す

我儕は信ず聖書は唯一直接天啓の書なる事を又信ず聖書は人類を導きて栄光ある来世に至らしむる唯一の完全なる嚮導者なる事を

我儕は信ず至仁なる創造者正義なる主催者最後の審判者なる絶対無限の神を

我儕は信ず凡て信実に悔改めて神の子を信じ罪の救を受くる者は身を終るまで聖霊の佑導を受けた天父の賢顧を蒙りて終に贖はれたる聖徒となり其の喜を受け其業を勤むるに適ひたる者とせらる可し左れど凡て福音を聞きて信ぜざる者は必ず罪に亡びて神の前より長へに退けらるべき事を

次に記する誠は我儕如何なる辛酸を嘗むるとも終身是れを服膺履行せんことを約す

爾精神を尽し力を尽し主なる爾の神を愛し可し又己の如く爾の隣を愛すべし

生命あると生命なきとに係らず凡て神の造り給へるものに象りて彫みたる像若しくは作りたる形を拝すべからず

爾の神エホバの名を妄りに云ふべからず

安息日を覚えて之を聖日とせよ此日には凡て緊急ならざる義務を休み勉めて聖書を研究し己の徳を建つる為めに用ゆ可し

爾の父母と有司に従ひ且つ之れを敬ふべし

詐欺、窃盗、兇殺、姦淫、若しくは他の不潔なる行為をなすべからず

爾の隣を害すべからず

断えず祈るべし

我儕は互に相励さん為め此の誓約によりて一個の団体を組織し之を「イエスの信徒」と称し而して我儕処を同ふする間は毎週一回以上共に集りて聖書若くは宗教に関する他の書籍雑誌を読み若くは宗教上の談話を為しまた相共に祈祷会を開く事を誓約す希くば聖霊我儕の心に臨みて我儕の愛を励まし我儕の信を堅くし我儕を真理に導きて救いを得るに至らしめんことを

    原文書は、現在札幌独立教会に保存されている。もちろん英文で書かれ、その後にクラーク以下、学生たちの署名がローマ字で記されている。ここでは署名した生徒の氏名のみ記入順に掲げる。

黒岩四方之進、伊藤一隆、山田義容、佐藤昌介、内田瀞、田内捨六、中島信之、大島正健、渡瀬寅次郎、柳本通義、小野兼基、佐藤勇、安田長秋、出田晴太郎、荒川重秀、小野琢磨、太田稲造、佐久間信恭、宮部金吾、足立元太郎、高木玉太郎、広井勇、内村鑑三、町村金弥、南鷹次郎、藤田九三郎、村岡久米一、諏訪鹿三、岩崎行親、伊藤英太郎、伊藤鏗太郎

    ここには一期生16人と二期生15人、あわせて31人の署名がある。内村本人が語るように、この署名は「私の意志に反して強制されたもの」であった。親友が次々と署名していく状況にあって署名を拒めば、それはそれは共同体からの疎外を意味した。いわば署名は札幌農学校へのイニシエーションにあたったのである。署名の経路には不本意なところがあったにせよ、新しい信仰は、内村の生活に変化をもたらした。(参考:「内村鑑三日録 1」鈴木範久 教文館)

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