貧乏と名声
ゴッホは生涯、孤独と貧乏との戦いであったが、皮肉にも、彼の死後、ゴッホの作品は高騰し、いまでは一点、数十億円の価格で美術商たちに売買される。生前にはたった一枚の作品しか売れなかったこの画家のこの作品に誰が投資するのだろうか。サザビーのオークションには世界中から投機家たちが集まってくる。「芸術の神は嫉妬ふかい」という。真の芸術家はすばらしい才能を持つため、芸術の神はその才能に嫉妬して、芸術家は苦難の人生を味わう。芸術を解しない民衆が貧乏画家に嘲笑や迫害を加えるのも、芸術の神の仕業なのだろう。しかし、その芸術が一度、理解されるや、美術館に飾られ、画集が出版され、その孤独で悲劇的な人生はドラマ・映画化される。巷にブームが巻き起こり、名声が与えられると、作品を理解しない大衆も、知っているように褒め称える。「名声とは誤解の総括にすぎない」とは詩人リルケの名言である。だが生前に名声を得た作家が幸福であるか、不幸であるかは誰にもわからない。ノーベル賞候補と騒がれている村上春樹のように。
« 現代政治家の故事引用について | トップページ | 岸恵子の見た新星マリア・シュナイダー »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- あなたは備蓄米「買う」「買わない」どっち派?(2025.06.03)
- 休日の過ごし方(2025.05.06)
- 噂の「ナウル台座」(2025.04.21)
- 定額減税調整給付金(2024.08.02)
- 人生、楽しく行きましょう(2024.06.07)
コメント