草食系男子・牧場春彦はどうしているのだろうか?
牧場春彦とは「巨人の星」に登場した絵の好きな青雲高校の友人である。大人しいのに伴の父親を夜に襲撃する。そのことを知った星飛雄馬は牧場の身がわりとなって高校を退学する。今でいう肉食男子の星と草食男子の牧場の対比があざやかである。
やはり男子は野球、サッカーでなくちゃあ。戦前なら剣道、柔道、そして軍人になるのが理想か。芸術や文学で、「源氏物語」や「西鶴」などはもってのほか。男子の軟弱、柔弱はもっとも否定された。外国でもフランコ政権では、デュマの「椿姫」、フローベルの「ボヴァリー夫人」は禁止された。ナチス・ドイツはいうまでもない。ファシズムだけではなく、カルヴィンやパスカルは芸術を否定した。富国強兵の明治も「詩を作るより田を作れ」がスローガンだった。浪漫派、耽美派などというのは一部の有産階級にのみ許された話なのだ。いまでもロリータ、萌えキャラ、ポルノグラフィー、オタク文化など盛んだが、柔弱・軟弱を悪しきものと感じる人は多い。就職には体育会系が有利だし、美術館ではポルノは排除されるし、法規制も進行しつつある。しかし男子を単純に草食男子、肉食男子と二分化することは危険である。草食男子にこそ長所がある。より人間的、文学的、芸術的、ヒューマニティが認められる。文学とは、単なる慰みものではなく、人間的な真実を求めることにあると思う。つまり性をぬきにしては有り得ない。近代小説の始まりをボッカチォの「デカメロン」とみる文学者は多い。そしてイタリアン・エロスの伝統は現代にも生きている。イタリア映画には、童貞の少年が妖艶な年上女性にセックスの手ほどきをするという性春喜劇に根強い人気がある。ラウラ・アントネッリ、エドウィジュ・フェネシュ、バーバラ・ブーシュ、シモネッタ・カーロ、グロリア・グイダ、ダグマー・ラッセルダル、フェミ・ベヌッシ、カルメン・ルッソ、ナディア・カッシーニなどなど。中年になった牧場春彦はひとりでイタリアのエロス映画を楽しんでいるのだろう、と勝手な想像をしている。日本の基底文化そのものも万葉集、源氏物語、和歌、俳諧と草食的な文化である。
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