個人の収書が国家的財産になること
18、19世紀の経済学者たちの多くは歴史家が多い。スイスの学者シスモンディ(1775-1842)もパリを中心とした文壇で活躍した学者である。大著としては「中世イタリア諸共和国史」や「フランス史」などがあるが、専著として「政治経済学の新原理」(1819)の原著が国立国会図書館に所蔵されている。これは経済学者の高橋精之(1933-1991)の寄贈によるものだそうだ。高橋は数千冊の和書と二千冊を超す洋書を所蔵していた。主に18世紀から19世紀の古典が多い。ニュートン「自然哲学の数学的原理」(1687)、バークリ「人間知識の原理」(1710)、スウィフト「ガリバー旅行記」(1726)、モンテスキュー「法の精神」(17748)、カンティヨン「商業一般本質論」(1755)、ガウス「整数論研究」(1801)、キーツ「エンデミオン」(1818)、ヘーゲル「法哲学」(1821)、ディケンズ「クリスマス・キャロル」(1843)、フロイト「夢判断」(1900)、ルクセンブルク「資本蓄積論」(1914-1921)、ハイデッガー「存在と時間」(1921)といった名著の初版本がズラリある。それにしてもこれだけの本をどのように入手したのか。サザビーのオークションで手に入れたものもあるらしい。一個人の収集の労によって貴重な本が国民の蔵書となったわけであり、高橋精之の収集事業は快挙といわねばならない。
« 別れても好きな人 | トップページ | 和田垣吐雲 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 紙の寸法の話(2023.03.17)
- 冨山房と坂本嘉治馬(2019.03.23)
- 戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊(2018.08.13)
- 素敵な本との出会いを求めて(2018.03.18)
- 校正ミスはなぜおこるのか(2023.05.19)
« 別れても好きな人 | トップページ | 和田垣吐雲 »
コメント