渡り鳥いつ帰る
戦後の売春防止法が施行される頃、日本映画では数多くの娼婦、遊郭、赤線を描いた作品が作られた。「渡り鳥いつ帰る」(1955)もその一つ。物語は伝吉(森繁久弥)が戦禍の中に妻千代子(水戸光子)と娘(二木てるみ)を見失い、なじみの女おしげ(田中絹代)が経営する娼館「藤村」の主人となっている。伝吉、千代子、おしげを中心に藤村で働くアプレ娘たちの実態を描く。女優陣が豪華。久慈あさみ、岡田茉莉子、淡路恵子、桂木洋子、高峰秀子、田中絹代、水戸光子、七大女優の競演である。なかでも淡路恵子が戦後のアプレ娘の雰囲気がでている。映画では藤村は「カフェー」「サロン」という看板があり、ホステス募集とある。女給という言葉も使われている。永井荷風の原作だそうだが、戦前の「玉の井」のような純和風なものではなく、和洋折衷である。久慈のように和服の女もいるし、淡路恵子のようにドレスのホステス風な娘もいる。時代は昭和27年という設定なので、このような戦後風俗も消えていく運命にあるという男の哀惜が映画に感じられる。
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