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2010年12月30日 (木)

現代ヒューマニズム論においてロマン・ロランは語らねばならない

    日本にもノーベル文学賞候補といわれる作家がいるが、作品を映画化して商業主義となることや、ファションや流行として取り上げるのが好ましいどうかかねがね疑問に思っている。日本人には高邁かつ清らかな精神ということを失なっているのだろう。ロマン・ロラン(1866-1944)ほどノーベル文学賞にふさわしい作家はいないと思う。ロランはベートーベン、ミケランジェロ、トルストイの伝記を書き上げたが、これが「ジャン・クリストフ」の基礎となったことはよく知られている。この天才音楽家ジャン・クリストフ・クラフトの物語はヨーロッパの名声を得て、1915年のノーベル文学賞を彼にもたらした。ロランの立派なところは受賞後の活動であろう。多くの作家はノーベル賞受賞後、執筆活動に著しい低下をみるものである。大江健三郎にしても川端康成にしても代表作を受賞後に創作することはなかった。川端などはノーベル賞そのものが重荷となったようにもみえる。ロランの誠実な高邁な思想はノーベル賞受賞後も変わることは無かった。第一次世界大戦前後のフランス女性アネット・リビエールの生涯を平易な文体で描いた小説「魅せられたる魂」は多くの読者を得た作品である。ロランは絶対平和主義の立場で運動を展開したが、第二次世界大戦の終結を見ずに亡くなった。かつて日本でも高等学校「倫理」でロマン・ロランは教材として取り上げられたが、今ではほとんど取り上げられないそうである。現代ヒューマニズム論においてロマン・ロランは欠くことのできない一人だと思う。

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