広辞苑人名採録基準のナゾ
広辞苑は現在、第6版(2008)をかさね、国語辞書でありながら固有名詞などを含む事典的な要素も十分兼ね備えた総合百科事典でもある。とくに人名などをみると、直江兼続、カメハメハ、ユルスナール、ケニヤッタ、ビル・ゲイツ、アン・サン・スー・チーと現在人名も豊富に採録している。特徴としては外国人名は生存中の人物も採録し、日本人名は物故者に限っている。日本の現存者を採用しない理由は評価が定まらないからであろうし、この原則を外国人に適用しないのは、世界の元首など利便性を重視したからであろう。
現代人名で興味のあるのは多数の芸能人の中から採録する基準はどのようになっているかである。もちろんいかなる人名事典も採否を成文化して明確にすることは不可能であり、多少の揺れはあると理解している。いくつかの例をみると、次の3点が採否の基準と関連すると思われる。①知名度②活動期間③サプライズ
たとえば戦前期の女優5人を比較すると、○栗島すみ子、×酒井米子、×夏川静江、○岡田嘉子、○田中絹代。
○採録、×不採録、田中絹代のように戦前戦後も活躍した女優は当然として、岡田嘉子は樺太国境を越えソ連に逃亡したという特異な要素が採録にプラスとなった。
○植木等 ○ハナ肇 ○フランキー堺 ○坂本九 ○渥美清 ×夏目雅子
主演作品の多い俳優は採録されやすい。夏目の場合は活動期間が足りなかったからだろうか。
6版以降に故人となられたかたで、マイケル・ジャクソン、森繁久弥、藤田まこと、谷啓、高峰秀子らは新版採録の有力候補者だろう。
○笠智衆 ×志村喬
どちらも日本映画を代表する名優であるが、「生きる」「七人の侍」の志村喬を不採録としたのは理解できない。
○近藤勇 ○土方歳三 ×沖田総司
沖田総司はコンサイス日本人名事典でも不採録になっている。
○(ジェラール)フィリップ ○(マリリン)モンロー ○(オードリー)ヘプバーン ×ケリー ×マックィーン
外国映画俳優が採録される基準は厳しい。グレース・ケリー、スティーヴ・マックィーンが不採録である。
○ペック ×ホールデン
1950年代アメリカ映画を代表する二枚目だが、採否の差はどこにあるのか。
○赤垣源蔵 ○小野寺十内 ○寺坂吉右衛門 ×俵星玄蕃 ×清水一角
赤穂義士は多く採録されているが、架空人物や周辺の人物は不採録か。
○アベベ ×円谷幸吉 ○人見絹枝
円谷3位、人見2位。お願い、円谷選手を載せて頂戴。
しかし、このような基準で採録すると、スポーツ界などで故人が増えてくるだろうし、一書に収められるか別の問題も生ずる。
いま話題の市川海老蔵は遠い先の話だが、広辞苑採録が約束されたような人である。将来、市川団十郎を襲名すればの話だが。
« Joy To The World | トップページ | おもろい夫婦 »
コメント