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2010年11月 6日 (土)

紙がなくなる日

   森耕一(1923-1992)の「図書館の話」(1961)が最初に書かれたのはもう半世紀前のことだが、興味深いエピソードがたくさん書かれている。デジタル化が進む以前の図書館員がどのような時代が到来するかを妄想していたかがわかる。

フィンランドのエーロ・トルヴァーネンという作家が、「紙の消滅」という短編小説を書いています。ある秋の夜明け、世界中の紙という紙が、炎も上げずに燃えつきて灰になってしまいます。その後に起きた混乱の模様を描いているのです。紙が消滅したとき、人びとにとって、いちばん大きな痛手は、紙幣が消えてなくなったひとでしょう。有り金は硬貨だけになってしまいます。身分証明書もなくなります。戸籍も消えてなくなります。学校に通う生徒たちにとっては、教科書もノートもなくなってしまいます。記録を残そうと思えば、先生の話を録音テープにとるとか、黒板の文字や絵を次々にカメラで撮影するからです。

   この本が書かれた時代でも、すでに録音テープや映像資料で記憶を残すという方法は考えられていました。だが、本を電子化して保存したりする、という具体的なイメージはまだ十分ではなかったようです。森耕一さんの死後、インターネットや紙資料のデジタル化が急速に進んでいったのです。天国で現在のインターネット社会や電子図書の配信、動画サイト「ユーチューブ」を閲覧できる社会をどのように思われるか興味あるところです。

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