いい本とのつきあい方
読書の秋。読売新聞の調査によると、「1ヵ月に1冊も本を読まなかった」という人は52%もいるという。話題の電子書籍も「利用したことがある」という人はわずか6%にとどまっている。2010国民読書年の運動はさびしい結果となった。
本との出合いは、新しい価値と文化をつくる。むかし図書館に勤めていたとき、こんな議論があった。どんどん新しい本が棚に並ぶので、古い本を棚から抜いて書庫にしまう。奥付を開いたり、本をみたりしていては時間がかかってしまう。そこで背のラベルに発行年を記しておけば、本の抜き取りに便利だという人がいた。たとえば今年に入った本には2010年だから「010」とすれば人目でわかる。機械的で合理的で除籍作業もスムースになる。でもいい本や絶版になって手に入らなくなった本も作業の流れて書庫に入ったり除籍になってしまうだろう。多少棚づくりはその図書館の生命だから、時間をかけても選書したほうがいいということで、実施には至らなかった。やはりどこの図書館でも選書は大切。選書屋(ブックデザイナー、ブックコーディネーター)という職業や市民に選書をゆだねたりするところもあるそうだが、個別の本だけではなく、蔵書構成を十分に知った選書が求められる。読み手の顔がみえるためには、日々カウンター業務をしている職員でなければいけない。これは大図書館であっても、街頭の小さな文庫であっても同じ。いい本とは新刊とは限らない。むしろ出版年がかなり経過した本に良書は多い。名著とか日本図書館協会が選定しなかった本でも良書はある。むかし公共図書館は選定図書しか買わないというところがあったが、そういう図書館は蔵書が魅力的ではなかった。権威主義から脱したところに図書館の本質がある。
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