シャルル・ボワイエの永遠の愛
シャルル・ボワイエ(1897-1978)というハリウッドとフランス映画に出演した往年の二枚目スターはいまでも語り継がれる人である。それは愛妻の死から2日のちに、あと追って自らの手で命を絶ったからである。シャルルがイギリスの女優パトリシア・パターソンと熱烈な恋愛のすえに結婚したのは37歳のころ、ようやくスターになりかけた頃だった。2人ははためにも羨む仲だった。ところがパトリシアは肝臓癌に冒された。医師はシャルルに病名を伝えたが、彼はとうてい妻に話す気にはなれなかった。それから半年、シャルルは片時も妻の傍をはなれず、彼女を慰め、励まし、献身的な看病をした。しかし、彼の誠意をもってしても医療の効はなく、妻は息をひきとった。シャルルがアリゾナ州フェニックスの自宅で自殺したのは妻の死から2日後のことだった。ところでシャルル・ボワイエといえば世界で一番多くの美女と共演したことのある男優としても知られる。クローデット・コルベール(白い友情)、キャサリン・ヘップバーン(心の痛手)、ダニエル・ダリュー(うたかたの恋、たそがれの女心)、マレーネ・デートリッヒ(沙漠の花園)、ジーン・アーサー(歴史は夜作られる)、グレタ・ガルボ(征服)、へディー・ラマー(カスバの恋)、アイリーン・ダン(最後の抱擁)、ベティー・デービス(風もこの世も天国も)、マーガレット・サリバン(裏街)、ジョーン・フォンティーン(永遠の処女)、イングリッド・バーグマン(ガス燈、凱旋門)、ジェニファー・ジョーンズ(ルービッチの小間使)、アン・ブライス(モナリザの微笑)、マルチーヌ・キャロル(女優ナナ)、フランソワーズ・アルヌール(幸福への招待)、ブリジッド・バルドー(殿方ご免遊ばせ)。これらの銀幕の美女と恋を演じたあと、私生活では妻一筋に永遠の愛を貫いた男も稀であろう。
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