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2010年9月15日 (水)

お吟さま

    今東光「お吟さま」(1956)はこれまで田中絹代(1962年)と熊井啓(1978年)によって二度映画化されている。千利休が豊臣秀吉の朝鮮出兵に反対して自害したという話は今東光よりも以前に、海音寺潮五郎「天正女合戦」(昭和11年)によって小説化された題材である。今東光は、利休の娘お吟とキリシタン大名高山右近と愛をメインにおいた。昨年の大河ドラマ「天地人」では直江兼続が千利休の娘に慕われるという設定になっていた。千利休の娘の実像はどうだったのだろうか。

    まず利休はなぜ秀吉に殺されたのか。現在でもはっきりとした定説があるわけではない。映画「お吟さま」(1978)を見ると、中村敦夫演じる山上宗二が秀吉に朝鮮出兵を批判し、怒りを買い耳と鼻を削がれ打ち首にされる場面がある。だが聡明な利休が宗二のようにあからさまに政治に口だすとは考えにくい。歴史の記録によると、朝鮮出兵に反対したためではなく、大徳寺山門金毛閣に利休自身の木像を置いたという不敬罪と、茶器に法外の値段をつけて売買したという詐欺罪によって処罰されたという説がある。ではなぜ利休の娘が秀吉との揉め事の一因となったのであろうか。『松屋日記』には、利休の3人の娘が記されている。名前はわからない。千紹二の妻、石橋良叱の妻、万代屋宗安の妻、の3人である。秀吉と利休との揉め事の女は千紹二の妻とみられる。記録に「一乱起」とある。つまり切腹したというのである。これを根拠に作家がフィクションを成したものであろうか。利休の娘が女の身でなぜ切腹したのか、本当の理由は謎である。

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