女優の出自について
深津絵里がモントリオール映画祭で最優秀女優賞を受賞した。田中裕子以来27年ぶりの快挙。寺島しのぶ(ベルリン国際映画祭)に続き日本人女優が海外でも高く評価されている。1973年生まれの深津絵里も芸歴は古い。「1999年の夏休み」(1988年)では「水原里絵」という芸名の少女だった。少女から大女優への道は険しい。ここまで来るのに言葉ではいいあらわせない努力があったのだろう。だが先輩の女優たちが扉を開けたことを忘れないでほしい。昨夜のNHK「ファミリーヒストリー」見てつくづく思う。関根恵子がデビューした頃は映画は斜陽産業だった。コストが安くできるピンク映画をほそぼそ作っていた。関根恵子にとってはラッキーだったともいえる。人気に陰りが見えた渥美マリに代わってすぐにヒロインの座を得た。当時の青年たちは新しいセックスのシンボルの登場を歓迎した。大映は倒産したが、関根恵子はテレビ「太陽にほえろ」のお茶汲み役でようやくお茶の間の認知をえることができた。熊井啓監督の「朝やけの詩」(1973)は異常と思えるほどのヘアー騒動だった。実際にあの映画は名作だった。農家の娘は関根恵子の祖父の代からの苦難の歴史が息づいていた。北海道の原野の大木を伐採し、根株を除去する作業のどんなに辛いことか。酪農は楽農ではなくて苦労だった。思えば女優の出自を語ることはタブーの時代があったと思う。松坂慶子しかり、山口百恵しかり、大竹しのぶ、浅野ゆう子。だが自らの暗い過去を「砂の器」の和賀英良のように隠すよりも、奮闘努力した家族のルーツを直視することはとてもいいことに思える。
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