ツァラトゥストラ
大導寺信輔は或る雪の夜、神保町の古本屋を一軒一軒覗いて行った。その内に或る古本屋に「ツァラトゥストラ」を一冊発見した。それもただの「ツァラトゥストラ」ではなかった。二月ほど前に彼の売った手垢だらけの「ツァラトゥストラ」だった。彼は読み返せば読み返すほど、だんだん懐かしさを感じた。「これはいくらですか?」「1円60銭」信輔はたった70銭でこの本を売ったことを思い出した。が、やっと売りの価の二倍、1円40銭に値切った末、とうとうもう一度買うことにした。(芥川龍之介「大導寺信輔の半生」より)
こんな体験は誰にもあったように思う。でもいまは懐かしい青春の日々。
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