坂本嘉治馬
慶応2年、高知県宿毛に生まれた。父・坂本喜八は藩老伊賀家の足軽で、戊辰の役に参加したが、帰郷後重病にかかり、藩の軍医だった酒井融(1840-1920)の治療をうけて一命をとりとめた。嘉治馬は明治16年上京、酒井融の世話で同郷の先輩・小野梓(1852-1886)が経営する東洋館に入社。明治19年、神田裏神保町9に古長屋を借りうけて古本を主とした書店冨山房を創業。天野為之の『経済原論』を処女出版、以来、学術書・教科書などを出版。昭和の円本合戦のさなかも、時流に超然としてわが道を行くの態度で『日本家庭大百科事彙』全4巻をはじめ多く出版を成功させた。昭和9年から『国民百科大辞典』が刊行され、多項目主義と一項一解主義の併用、左開き横組という画期的な編集で、満3年を経て、全12巻は完結した。小野梓の遺訓「益世報効」を社是とし、「良い本は高くとも売れる」という信念をもって生涯良書の出版事業に専念した。
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