国学者・上田秋成
上田秋成(1734-1809)といえば、今日では「雨月物語」「春雨物語」など怪奇・幻想の小説家として知られているが、生前はむしろ多趣味の文人という観があった。俳句をなし、歌を詠み、煎茶を嗜み、医術を修め、国史を論ずるなど、その興味尽きるところなし。だが生涯最も研究したのは万葉をはじめとした国学であった。秋成は建部綾足の紹介で加藤宇万伎(1721-1777)に会って入門している。その年には従来から諸説ある。大輪端宏は「結局、今のところは結論の出ないまま、明和3、4年ごろに秋成は宇万伎に入門したとしておくよりほかに仕方あるまい」(「上田秋成その生き方と文学」)とある。ところが長島弘明の「新潮社古典アルバム20上田秋成」には、明和8年の項に「この年か、大阪に来ていた加藤宇万伎に入門する」とある。加藤宇万伎は賀茂真淵(1697-1769)の高弟である。つまり真淵は明和6年(1769)に亡くなっているので、長島説であれば秋成は真淵に会っていないし、大輪説であれば秋成が晩年の真淵と会っていた可能性も残されているのである。
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