椎名麟三と演劇
映画「煙突の見える場所」(昭和28年)の原作は椎名麟三の短編小説「無邪気な人々」である。このころ椎名は思想的に行きづまり、毎晩のように新宿西口のハモニカ横町を飲み歩いていた。「太宰治の次に自殺をするのは椎名か」と噂された。
その前後、椎名は梅崎春生と中村真一郎らと映画「橋の上の女」(仮題、五所平之助監督)のシナリオを書くことになった。(完成しなかったようだ)中村の誘いでシナリオや芸能人ともつきあいだした。当時の演劇界には芥川比呂志という若手俳優を中心に活気があった。椎名と芥川は親しくなった。五所・椎名・芥川という関係の中から映画「煙突の見える場所」は生まれた。主演は田中絹代と上原謙、それに高峰秀子と芥川比呂志という超豪華なキャスト。(同年に「雁」で共演している)
通称「おばけ煙突」がある北千住の貧乏長屋が舞台だが、捨てられた赤ん坊の登場で、長屋の人々に今までにない連帯感が生まれる。高峰と芥川がジャンケンをするシーン一つ見ても清々しさを感じる。
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